中絶について

【中絶手術完全ガイド】
妊娠週数による手術の種類から、費用の目安までをご説明

中絶の定義

中絶手術について知る前に、まずは「中絶」の定義をしっかり知っておきましょう。
妊娠中絶とは、読んで字のごとく妊娠状態を途中でやめて継続しなくなることをいいます。妊婦のお腹の中の胎児が死亡した状態のことを指すので、一般的に自然発生的な流産や死産から人工妊娠中絶まで全てを含むことになります。
中学生や高校生などの若者の間で言われている「妊娠中絶」とは、人工妊娠中絶、つまり、人工的な手段(手術または薬品)を用いて意図的に妊娠を中絶させ、人為的に胎児およびその付属物を母体外に排出することをさしており、そこには流産・死産のことは含まれていません。
しかし、医学的には妊娠中絶というのは、胎児が死亡してしまった全ての状態のことを言うので、間違ったことを言っているわけではないのです。 流産と死産はともに胎児が死亡して生まれてくることを言います。
それぞれの呼び方の違いとして、流産は、妊娠から22週未満で胎児が死亡したことを言い、死産は、妊娠から22週以降で胎児が死亡したことを言います。また、死産してしまった時は役所に死産届を出さなければなりません。これは人工妊娠中絶手術をした時も同様です。
流産や死産の場合、自然に胎児が死亡したものと人工的に死亡させたものとがあります。自然に流産してしまったものは、妊娠したときに胎児側に起こった先天性の代謝異常などが原因であったケースが多くみられます。
また、自然に死産してしまったものは、妊婦の体と胎児の体の間で妊娠中に起こった何らかのトラブルが原因とされています。
さらに、その時妊婦のお腹の中で胎児が死亡していないとしても、流産しかけていたり、死産しかけていたりなど、何もしないでいると胎児が死亡してしまうおそれのある状態を切迫流産または切迫早産と呼びます。
切迫流産や切迫早産には出血や痛みなどを伴うこともありますが、早期発見・早期治療を行うことによって胎児の命を助けることができます。従って、あくまで胎児を助けることができるこの時点では妊娠中絶の定義に当てはまることはありません。
しかし、切迫流産であろうと切迫早産であろうと、その胎児の母親が人工的に妊娠中絶手術を受けて胎児が死亡した場合は、妊娠中絶ということになります。
妊娠中絶という言葉だけが独り歩きをして悪いイメージが先行していますが、妊娠中絶をしたからといって必ずしも人工妊娠中絶の手術を受けて胎児を死なせてしまったというわけではないことに注意してください。

中絶をするには

中絶は避けたいことですが、赤ちゃんを産むことができないのに妊娠をしてしまったら中絶をするほかありません。
妊娠していることが分かり、少しでも早く、人工妊娠中絶手術を受けようと思ったのであれば、産婦人科病院、あるいはレディスクリニックに行くといいでしょう。
人工妊娠中絶手術は産婦人科病院やレディスクリニックの特に母体保護法指定医師に認定されている医師の行う手術を受けてください。
「母体保護法指定医師」は母体保護法に基づいて中絶手術を行うことができる医師なので注意してください。

妊娠週数の数え方

レディスクリニックや産婦人科に行くと、初診でその時の週数は教えてもらえますが、自分で週数を数えることも可能です。
妊娠週数は、妊娠前の最後に生理になった日を基準として考えます。つまり、生理周期(28日)で妊娠した場合、最後の生理を妊娠第0週します。排卵あたりが第1週、次の生理予定日が第4週の一日目となります。
中絶手術は妊娠22週目を過ぎると、法的に犯罪になってしまいますので、中絶手術を受けることは出来ません。

中絶可能な妊娠週数

人工妊娠中絶手術は、妊娠5週目から21週目まで受けることが可能となっています。
ですが、日程が遅くなればなるほど、胎児が大きくなれば大きくなるほど、母体に危険が出てきやすくなります。そのため、出来る限り妊娠12週、つまり妊娠してから3ヶ月以内には受けるようにしてください。
その期間までなら、人工妊娠中絶手術はかなり短時間で終わるので、その分母体にかける影響は少なくなります。

初期中絶手術(妊娠5週目〜11、12週目)

妊娠5週目からだいたい11、12週目にかけての(胎児の成長具合やレディスクリニックの規定により若干異なる)初期中絶手術ですが、この時期は比較的安全、かつ中絶費用も低額で抑えられます。
妊娠5週目ではまだ胎児が小さすぎるため、レディスクリニックによってはもう少し待って妊娠6、7週目に入ってから中絶手術をする病院も多いです。
もちろん、週数が増えれば増えるにつれ、母親にかかる負担も大きくなるため、迅速な決断が必要となります。

初期妊娠中絶の方法は、掻爬と、吸引の2種類ありますが、状況によっては併用することもありますので、各クリニックで確認してください。

初期中絶手術の注意点

どちらの中絶手術でも共通して言えることですが、手術前日の夜11時以降は安全に麻酔をかけるため飲食摂取禁止です。これは麻酔の際に吐き気を起こし水分や食事などが気管などに入り窒息や肺炎を起こしてしまう危険性を防止する為です。 当日は病室に化粧を落とすためのクレンジングクリームがあったりネイルリムーバーが常備してあったりします。もちろん、ペディキュアも一切禁止となっています。 コンタクトを使用してる場合は眼鏡にしてください、と担当医師あるいは看護師から指示があるはずです。 前日までにネイルなどは落としたりして化粧の必要がない場合などは化粧水、乳液程度で病院へ行きましょう。 病院によりますが手術料は前払いの場合、後から身内が持参するからと言ってもお断りとなっていました。 ある病院では生理用ナプキンを持参するよう指示があるところもあります。

中期中絶手術(妊娠13週目〜21週目)

妊娠13週目から21週目にかけては中期中絶手術となり、4日から7日ほど入院しないとなりません。手術の規模もかかる時間も大きくなります。
初期中絶手術のように全身麻酔で眠っている間のわずかな時間に全てが終わると行ったような手術ではなく、人工的に陣痛をおこし、強制的に胎児を出産させます。痛みを伴ううえに危険性も高く、母胎にかかる負担も中絶費用も、初期中絶手術とは比べものにならないくらい大きいです。
さらには、出産した子供の死亡届を役所に提出、及び火葬の手続きも必要になってきます。

中期中絶手術を受ける際の注意事項

中期中絶手術は出産とほぼ同じ方法なので産褥ショーツのほうが内診やプロスタグランディン使用等で都合が良いのではないかと思います。 初期中絶手術の場合は全身麻酔をし、掻爬といって子宮の内容をかき出します。最近は吸引式の手術が多くなってきたそうでそれまでの掻爬よりも安全に行われているようです。日帰りがほとんどですので麻酔の影響を考え、付き添いの人に同伴してもらう必要があります。入院用、または手術用の衣類に替えて注射や検査などをしたり、輸血など緊急に備えて血管確保のため点滴をします。

中期中絶手術の場合は子宮口を広げる処置が数日ありますので点滴は後日行うことになると思います。初期中絶手術は子宮口を開き、スプーンのような器具で子宮内をかき出す器械的な方法が行われています。これに対して中期中絶手術はより自然に近い出産と似た状態を人工的に作り出し胎児を流産させます。プロスタグランディンは未成熟な子宮口をやわらかくし産道を広げやすくする働きがあります。成長した胎児を摘出できるように陣痛を起こして子宮収縮させながら人工的流産へと導くわけです。
初期中絶手術と違い、胎盤が完成しつつあるので胎児摘出後に軽くいきみ胎盤を剥がす処置も行われます。

初期中絶手術の場合は同意書だけで対処可能ですが、12週以降の中期中絶手術の場合同意書の他に死産届、死胎火葬埋葬許可証が必要になります。この場合、埋葬するにあたって火葬する事が前提になりますので病院によっては葬儀屋を通じて全て対処する方式をとっている病院もあります。

妊娠22週目以降

妊娠22週、つまり妊娠から約5ヶ月半を過ぎると、人工妊娠中絶手術を受けることは出来なくなります。
これは、中絶を行っていいとされている期間が「胎児が母体外において生命を維持することのできない時期」に限るとされていて、現在ではその時期を妊娠22週未満と母体保護法で決まっており、それを過ぎると堕胎罪となり、懲役刑に処される可能性があるからです。

人口妊娠中絶手術が可能な医療機関

産婦人科のある医療機関であれば、どこでも人工妊娠中絶手術が受けられるというわけではありません。人工妊娠中絶手術は、母体保護法指定医師、つまり、特別な認可を受けた専門の指定医の元でしか許可されていません。

人工妊娠中絶には母体保護法という法律が適用されており、妊娠を継続することで母体の健康を著しく害するおそれのある場合に人工妊娠中絶手術を行うことが許可されています。
ここでいう母体の健康とは、身体的な健康のことだけではなく精神的な健康も指しており、妊娠を継続することで妊婦に与えられる負担が考慮されるため、人工妊娠中絶を受けることが認められています。
そのため緊急時など、やむを得ない状態を除いては、母体保護法指定医師以外の者が人工妊娠中絶手術を行った場合、刑法の第29章「堕胎の罪」に該当するため懲役刑を科せられる可能性があります。

母体保護法に沿った人工妊娠中絶は、法的に正当な行為と判断されるために「堕胎の罪」の処罰の対象にはなりえません。最近では母体保護法の解釈が広がってきており、妊娠した女性の中でも少なくない女性が人工妊娠中絶手術を受けています。
人工妊娠中絶手術は手術を行う際、妊婦にもリスクが伴うため、当然のことながら助産院では行われることはありません。主に分娩を取り扱っている産婦人科が設置されたの母体保護法指定医師のいる総合病院や個人病院で、人工妊娠中絶手術を受けることができます。

病院によっては個別の医師の判断や倫理に基づいて、妊娠週数が20週以降の妊婦の場合は人工妊娠中絶手術は取り扱わない。という取り決めをしていて、その週数を過ぎた妊婦の人工妊娠中絶手術を拒否する病院も存在しています。
人工妊娠中絶手術が可能なのは法律的に満22週未満とされていますが、医師の方針によっては16週であったり20週であったりそれぞれの医師によって、実際に人工妊娠中絶手術を行う週数は違います。

場合によっては自宅の近くに人工妊娠中絶手術を受付してくれる母体保護法指定医師がいないこともありますが、都市部では多くの母体保護法指定医師が人工妊娠中絶手術を取り扱っています。

中絶手術の費用

中絶費用は、妊娠初期と妊娠中期によって変わってきます。 妊娠中期の中絶の場合は、手術費20万〜22万円+入院費が必要になります。 妊娠初期の場合は、6万〜12万円と妊娠中期と比べ最大3分の1以下の費用で済みます。また初期中絶の場合は入院が必要無いので、入院費も要りません。 他にも、持病の有無や麻酔の専門医の有無によっても費用が変わってきます。

中絶手術の準備

妊娠中絶を行うにはそれに伴う準備が必要になります。まず妊娠していることが確定となったら、人工妊娠中絶手術を受ける同意書もしくは承諾書に署名をしなければなりません。
各種項目に対する問診や検査が行われます。血液検査やクラミジア検査・心電図など病院よって行う検査は違いますが、それぞれが安全性を確保するために必要な検査になります。

人工妊娠中絶手術の際に自分で準備するものとしては、手術後の下着や着替えなどの身の回りのものだけ問題ないでしょう。
病院によっては下着以外の全てのものが病院側で準備されている場合もあります。その他にも前日は何も食べてはいけないので、手術後に水分補給のためにスポーツドリンクなどがあると良いかもしれません。
また、何かの書類に捺印しなければならないこともあるので、シャチハタではない印鑑などが必要とされる場合もあります。

基本的に人工妊娠中絶手術の場合は日帰りもしくは1泊2日の短期入院になることが多く、妊娠12週以降の人工妊娠中絶手術もしくは手術中に何らかのトラブルが発生しない限りは手術後長期入院になることはまずありません。
妊娠中絶手術は母体に負担がかかる手術ですが、普通の出産や帝王切開とは違い摘出する胎児は500gもないので、体調回復の過程や経過を考えて短期入院としているところがほとんどです。

人工妊娠中絶手術ではなく流産や死産となってしまった場合は、医療保険の適用範囲内で保険がおりるので、診断書などを取り寄せておくと良いでしょう。

物理的な準備より手術の際に気持ちを落ちつけるほうが重要なので、前日入院の場合は病院でもリラックスできるものを用意しておいたほうが良いかもしれません。

まとめ

人工妊娠中絶手術を行うと体にかなりの負担がかかりますので、人工妊娠中絶手術後のケアなどは、担当の産婦人科医の指示をしっかりと守ってください。

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